2014年4月初めに人間ドック学会がコレステロール値や血圧の新基準値を発表しました。この数字が従来の数値より大幅に緩和された数値だったため、マスコミに過剰に報道され、「血圧は高くても治療の必要はない」とか「コレステロールは下げない方が良い」とか無責任な放言が相次ぎました。
しかし、これは「人間ドック」を受けた人の平均値から割り出した数値であって、私たちが日々診療に使う数値とは無関係です。ご承知のように人間ドックは本来健康な方(または病気があってもまだ気付かれていない方)が受ける一種の健康診断です。その中にはまだ発見されていないかも知れませんが病気を持っておられる方も含まれます。その全体の数値から割り出された数値はあくまでも「人間ドックを受けられた方の平均値」「人間ドックを受けた人の判定に使われる数値」に過ぎません。
私たちが日々の診療に使っている数値はこれとは異なり、EBMに基づいて割り出された数値です。
コレステロールのガイドラインを発表している日本動脈硬化学会はこの「人間ドックの新基準値」騒動に対応して声明を発表しています。
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この声明の最後は「このような誤解を生じる可能性のある人間ドック学会の『基準範囲』は日本国民の健康に悪影響を及ぼしかねない危険なものであり、一般社会や医療界に誤解を与えないように、健診の本来の目的に沿って人間ドック学会には直ちに適切な対応をお願いしたい。」と結ばれています。
動脈硬化学会と同様に日本高血圧学会も声明を発表しています
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この声明にはこう書かれています。
「高血圧として治療の対象となる血圧の基準値や降圧薬による降圧目標値は、それぞれの方の年齢や合併している病気によって異なりますが、原則は140/90mmHg以上で治療対象、降圧目標は140/90mmHg未満です。75歳以上の方では少し緩めに、糖尿病や蛋白尿のある慢性腎臓病の人はもっと厳しく血圧を管理します。これらの値は、実際に治療をうけられた患者さんを対象にした膨大な研究結果を基に決められたものです。高血圧治療が必要な方におかれては、医師の指導のもと、適切に血圧が管理されることを期待いたします。」
患者様におかれましては、マスコミの興味本位の報道に惑わされることなく、ご自分の健康を守る習慣を続けられることをお勧めします。ご不明な点があれば、診療の際にお尋ねください。