β2刺激薬の貼り薬|前田内科医院|上尾市

「咳の貼り薬」の誤解 ~長時間持続型β2刺激薬貼付剤について~

喘息の発作を抑える薬の中で長時間持続型のβ2刺激薬(神経を刺激して気管支を拡げる働きが長く効く薬)は通常は「吸入薬」として使われます。ところが、日本ではこの仲間の薬が「貼り薬」としても使われています。(これは日本でだけ使われている剤形で、欧米ではこの「貼り薬」は使用されていません。)

風邪の咳には効かない

これは喘息の発作が夜中から明け方に多いという特徴があるために日本で開発された剤型ですが、これが誤って喘息以外の児童に安易に使われています。「咳の薬」(咳の貼り薬)と誤って処方されることがあり、風邪をひいて咳の出る時に使われる例がよくあるようです。しかし、この薬は咳止めではなく、風邪の咳に効果はありません。

喘息で使う際にも細心の注意を

長時間型β2刺激薬(吸入薬)は喘息には効果のある良い薬ですが、アメリカではFDA(日本の厚生労働省にあたる組織)が「単独では使わないように」と黒枠の警告を出している薬剤の仲間なのです。

喘息はアレルギーによって気管支に慢性炎症を起こす病気です。この炎症のために気管支の粘膜が腫れぼったくなったり、気管支の周囲の筋肉が収縮して空気の通り道が狭くなって苦しくなるのが喘息の本態です。気管支を拡げる薬は症状を楽にはしますが、炎症をとってはくれません。気管支を拡げる薬ばかりに頼っていると、いざという大きな発作が起きた時に間に合わなくなり、喘息によって命を落とすという悲劇につながることがあるのです。

アメリカではこの薬の単独使用で喘息死が増えるとする統計があり、必ず炎症を抑える薬(ステロイド吸入薬)と併せて使うよう指導されています。

一般に日本人は貼り薬が好きで、気楽に使う傾向があります。しかし、たとえ貼り薬でも薬として体内に入る以上、絶対安全とは言えません。

薬は正しく使いましょう。

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