小さいお子さんが高い熱を出した時に「熱によるひきつけ」を起こすことがあります。「熱性けいれん」と呼びます。一般には生後6カ月~5歳くらいまでに起きやすい傾向があります。
熱性けいれんは普通、熱が始まって最初の2~3時間の間に起こります。最初はキョトンとした表情を見せ、その後体が突っ張るように硬くなり、体をねじったり、目が白目を見せるようになる事もあります。短い時間の間、呼びかけても答えず、呼吸も乱れます。
このようなことが起こると、ご両親は気が動転してしまいがちですが、落ち着いて対処してください。
(注:熱が出る時に体がぶるぶると震えたり、ピクッと体が動く現象が起きる事がありますがこれは熱性けいれんとは違うものです。)
まず大事なことは「けいれん」が起きている間は意識をなくしていますので、吐いたものやその他で呼吸が妨げられないように注意してください。顔を横に向かせて吐いたものなどが外に出やすくしてください。
次に「けいれん」が起き始めてからの時間を計ってください。(後述するように普通の熱性けいれんはそう長く続かないことが多く、逆に長く続くようなら注意が必要です。)
(注:けいれんが起きている間、舌を噛むことを防ぐために口の中に物を入れるという方がいらっしゃいますが、かえって口の中を傷つけたり呼吸を妨げたりしかねません。口の中に物を入れずに見守ってあげてください。)
医療機関によっては、一度熱性けいれんを起こされたお子さんに、次から熱が出た時に「予防的」にけいれん止めの座薬を使いなさいと指示されることがあります。
(「ダイアップ」という名前のお薬で、ジアゼパムという成分が含まれています。)
当院ではこの薬を処方していません。(お勧めしていません。)
それは次の理由からです
アメリカの小児科学会(AAP)では「熱性けいれんは(薬を使うよりも)親御さんを安心させてあげることが一番大事な治療だ」としています。
参考までにアメリカの小児科学会(AAP)の熱性けいれん小委員会のコメントを原文でご紹介しておきます
"Based on the risk and benefits of effective therapies, neither continuous nor intermittent anticonvulsive therapy is recommended for children with one or more simple febrile seizures. The American Academy of Pediatrics recognizes that recurrent episodes of febrile seizures can create anxiety in some parents and their children and as such appropriate educational and emotional support should be provided".
(注:単純型の熱性けいれんでない場合はこの限りではありません。)一般に「単純型熱性けいれん」は15分を超えず、しかも24時間で一回しか起きないと定義されています。普通は5分を超えて続かない例が圧倒的に多いようです。
(逆に15分を超えて続く場合や一日のうちで続けて何度もけいれんが起きる場合は「複合型」と言って注意が必要です。このような場合は小児神経の専門の先生に診て頂く事をお勧めしています。)
5分以内にけいれんが治まり、意識も戻っているようなら、心配ないことが多いのですが一応かかりつけの先生にはその旨をお伝えになって下さい。
昔から熱さましを使うと、一旦熱が下がった後にまた熱が出る際にけいれんが起きるので使わない方がよいという意見があります。しかし、本当にそうでしょうか。
解熱剤を使って行われた複数の臨床試験を検討した報告(2002年)では解熱剤を使った群と偽薬を使った群で熱性けいれんの出方に差はなかったとされています。
熱さましを使ったからけいれんが出やすくなったという事はなさそうです。しかし逆に熱さましを使ったらけいれんが起こらなくなるという事もありません。
当院ではお子様ご本人が熱を「つらい」と感じているようなら「熱さまし」(お子さんには普通アセトアミノフェンという成分のお薬を使います)を使って「つらさ」を少なくしてあげてもよいと考えています。もちろん、熱があっても「つらく」なければ使う必要はありません。
◎熱性けいれんについてまだご不明な点があれば、診療時にお尋ねください。